立て続けに脂肪腫。珍しい病気は、不思議と続くものだ。
主訴は、眼球突出。頭部の形はあまり変わっていないが、CTでは側頭筋を置換しながら、腫瘤が拡大していた。浸潤性脂肪腫である。
腋窩の脂肪腫も珍しいが、側頭筋内に発生した浸潤性脂肪腫は初めての経験だった。腫瘍だけを筋肉や骨から分離することは再発必至であり無意味に思えた。頬骨、下顎垂直枝に接し、頭蓋骨にも近接していた。もちろん、眼球、頬骨腺、眼窩の脈管も近い。しかし、これまでの経験上、このCT画像、脂肪腫の性質上、側頭筋内に限局しているだろうから、頬骨および下顎垂直枝部分切除を行えば、en blocで切除できると根治を目標に立てた。
大型犬の咬筋および側頭筋は分厚く、下顎垂直枝の切断はかなり深部での操作になった。顔面神経は目視で確認し切断を避けた。また下顎内側の筋付着を処理する際、やや視野が狭く難があったが、ライトつきの拡大鏡のお陰で確実な処理ができた。CTで不安視された眼球、頬骨腺への浸潤はなく、側頭筋ごと一括切除できた。術後、顔面神経麻痺、開口閉口障害などの合併症もなく、退院している。
北大の細谷先生が以前に、浸潤性脂肪腫は罹患筋を中心に攻めれば再発しないのでは?と症例発表している。そうあってほしい。
西原動物病院(https://sites.google.com/site/niahhp/)副院長の藤田淳です。東京大学、日本小動物医療センターなどでも手術に参加、執刀しています。手術を通して、体の仕組みを考えることがあります。専門的な用語も含みますが、「身体」や「病気」について、関心を深めていただけたら幸いです。ご質問、ご意見は直接藤田淳もしくは病院まで直接お願いします(ブログのコメントへは返信できないことがあります)。 *手術中の写真などを含みますので、特に医療関係者ではない方は、気分を害される場合があります。ご了解いただける方のみ閲覧下さい。
2015/04/15
腋窩脂肪腫
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| CT-3DMPR |
脂肪腫は、犬では肥満細胞腫についで多く見られる、良性の腫瘍である。身体の何処にでも見られるが通常は体調に影響しないので、経過観察となることが多い。しかしできた場所によっては問題となる。また、浸潤性を示す場合、悪性腫瘍のように適切な切除が必要な場合がある。
これまで手術したのは、ほとんどが大腿部筋間脂肪腫、ときどき会陰部・骨盤内脂肪腫だった。今回は、腋窩(上腕内側)筋間。これまで腋窩は1度しかみたことがない。腋窩は、腕に分布する血管神経が豊富であり、今回も上腕動静脈、頭側皮静脈などが変位していた。明らかな浸潤性はみられず、筋間脂肪腫と判断した。進行緩徐で、症状がなければ経過観察したいところだが、腫瘤拡大、跛行ありのため、手術となった。
CTでアプローチを熟考し、上腕内側を遠位から近位方向へ切開し、胸部では腋窩を覗きやすく、深胸筋の走行を確認しやすいように頭尾方向へと半円状に切開を拡大した。
深胸筋を部分切除し深部を確認したところ、その腱膜下に発生した筋間脂肪腫で浸潤性は低いと分かった。栄養血管は上腕動脈から分岐しており、腕への血流を確保。重要な腕神経叢も圧排のみで剥離可能であった。
術後1週間程度で、手術前の疼痛は快方に向かっている。脂肪腫による腕神経叢圧迫が原因だったのだろう。
2015/03/14
犬糸状虫症
犬糸状虫、フィラリア。そろそろ予防シーズンに入る。
ショックや溶血など強い症状を伴う急性症だけでなく、じわじわ蝕む肺高血圧、肝不全による腹水症も見ていて辛い病気である。
元気食欲なく辛そうな子が来院された。昨年からフィラリア症で治療中だったが、どうも肝不全の段階になってしまったのか、腹水がなかなか引かない。食欲はなく、ジリジリと痩せてきている。
腹水を抜くことは一時しのぎではあるが、高血圧を助長する、呼吸困難や食欲不振の原因と考えられるときは抜くことがある。
局所麻酔下でお腹に針をさすと、薄い赤褐色の液が2リットルも抜けた。皆、複雑なため息を付いた。なんとか食欲を取り戻してほしい。
ふと抜けた液体を見るとなんだか泳いでいるものがいた。フィラリアだった!?
最近、見ることが少なくなったフィラリア症だが、根本的に治療ができない以上、これまで以上に予防を啓蒙しなければと心に刻んだ。
ショックや溶血など強い症状を伴う急性症だけでなく、じわじわ蝕む肺高血圧、肝不全による腹水症も見ていて辛い病気である。
元気食欲なく辛そうな子が来院された。昨年からフィラリア症で治療中だったが、どうも肝不全の段階になってしまったのか、腹水がなかなか引かない。食欲はなく、ジリジリと痩せてきている。
腹水を抜くことは一時しのぎではあるが、高血圧を助長する、呼吸困難や食欲不振の原因と考えられるときは抜くことがある。
| 腹水中にもフィラリア幼虫 |
ふと抜けた液体を見るとなんだか泳いでいるものがいた。フィラリアだった!?
最近、見ることが少なくなったフィラリア症だが、根本的に治療ができない以上、これまで以上に予防を啓蒙しなければと心に刻んだ。
2015/03/13
門脈シャント
門脈シャント、門脈体循環短絡症、いろんな呼び方がある。調べてみると、イギリスの外科医John Abernethyが1793年に、内臓逆位の症例で発見している。獣医学領域では1974年にAudell, Ewingらが別々に報告しているのが最古のようだ。それからしばらく注目されなかったのは、診断が難しかったからだろう、CTによる全身検索が広まった2000年台から、人医領域でも成長期の疾患として認識され報告が増えてきた。人医領域、獣医療域が同レベルの歴史を持つまれな疾患である。
病気としてはシンプルだ。胎子が育つ過程でなくなるはずの血管が残ってしまった、もしくは胎子の頃に発達するはずの血管ができずに他の血管がその代わりに発達してしまったという奇形である。しかしその影響は時に深刻になり、めまいや痙攣発作を起こすこともある。人ではかつて、精神疾患ではないかと精神科を紹介されることもあったらしい。そして肝臓が育たないせいで虚弱になる。症状が軽い場合もあり、大人になってからたまたま発見される場合もある。
治療に目を向けると、異常な血管をなくせばいいのだから、傍から見ればシンプルな異常だ。しかし、どうも本人にとってはそう簡単なことではないらしい。ときに治療を困難なことがある。思うに、その状況に生まれて適応しながら成長したということが、病気をより複雑にしているのだろう。
術後発作症候群と呼ばれる、いまだ病態解明が不完全な合併症がある。手術後3~5日後に1割程度の可能性で原因不明のけいれんが出てしまい、場合によっては難治性で命にかかわる。血液凝固因子の不足による出血や門脈高血圧症など、病態がわかっており対処できる合併症と異なり、この痙攣発作は出ないことを祈り、出てしまったら発作を止める最大限の処置を行って回復を祈るしかない。しかも不思議なことに人医領域ではこの合併症の発生が報告されていないので、獣医は未だお手上げ状態である。
今回も、やることはやった、あとはただただ祈るのみである。
病気としてはシンプルだ。胎子が育つ過程でなくなるはずの血管が残ってしまった、もしくは胎子の頃に発達するはずの血管ができずに他の血管がその代わりに発達してしまったという奇形である。しかしその影響は時に深刻になり、めまいや痙攣発作を起こすこともある。人ではかつて、精神疾患ではないかと精神科を紹介されることもあったらしい。そして肝臓が育たないせいで虚弱になる。症状が軽い場合もあり、大人になってからたまたま発見される場合もある。
治療に目を向けると、異常な血管をなくせばいいのだから、傍から見ればシンプルな異常だ。しかし、どうも本人にとってはそう簡単なことではないらしい。ときに治療を困難なことがある。思うに、その状況に生まれて適応しながら成長したということが、病気をより複雑にしているのだろう。術後発作症候群と呼ばれる、いまだ病態解明が不完全な合併症がある。手術後3~5日後に1割程度の可能性で原因不明のけいれんが出てしまい、場合によっては難治性で命にかかわる。血液凝固因子の不足による出血や門脈高血圧症など、病態がわかっており対処できる合併症と異なり、この痙攣発作は出ないことを祈り、出てしまったら発作を止める最大限の処置を行って回復を祈るしかない。しかも不思議なことに人医領域ではこの合併症の発生が報告されていないので、獣医は未だお手上げ状態である。
今回も、やることはやった、あとはただただ祈るのみである。
2015/03/08
2015/02/18
ストーマ
ストーマstomaとは、孔という意味である。医学で用いる場合には、手術により腹壁に開口させた消化管もしくは尿路の出口を指す。
獣医学領域でのストーマ造設は、直腸がんなど骨盤内蔵を侵す悪性疾患に対する補助治療であるが、個人的にはより広範囲に適応できるのではないかと考えている。
この間、犬よりも管理が難しい猫ちゃんでストーマ造設を行ったが、その後も、徐々に管理に慣れてきて順調だと聞いた。患者さんごとに注意深く適応を検討し、手術における微調整、術後の丁寧なケアにより、比較的受け入れやすいものになってきたと思う。
これまで管理が難しいという印象から敬遠されることが多かったが、手術方法の改良により今後ますます管理は改善するだろう。高齢化した犬や猫が増えている。今後は人のように癌に対しても積極的な治療が行われ、オストメイトとして長生きする犬や猫たちが増えるのではないだろうか。
獣医学領域でのストーマ造設は、直腸がんなど骨盤内蔵を侵す悪性疾患に対する補助治療であるが、個人的にはより広範囲に適応できるのではないかと考えている。
この間、犬よりも管理が難しい猫ちゃんでストーマ造設を行ったが、その後も、徐々に管理に慣れてきて順調だと聞いた。患者さんごとに注意深く適応を検討し、手術における微調整、術後の丁寧なケアにより、比較的受け入れやすいものになってきたと思う。
これまで管理が難しいという印象から敬遠されることが多かったが、手術方法の改良により今後ますます管理は改善するだろう。高齢化した犬や猫が増えている。今後は人のように癌に対しても積極的な治療が行われ、オストメイトとして長生きする犬や猫たちが増えるのではないだろうか。
2015/01/30
鎌ヶ谷警察より電話。
本日、鎌ヶ谷警察署より電話がありました。
警察の方が、通報を受けて保護した動物を当院に連れてくることがあります。
怪我した動物を病院まで連れてきていただく警官の心の暖かさには、いつもおすそ分けをいただく気分です。
こんな寒い日にまた・・・
しかし今日の電話は違いました。
「感謝状を贈呈したい」とのこと!?
日頃の活動が、積極的な協力として表彰されました。
地域社会に貢献されている警察の手助けとなれたことは喜ばしいことです。
院内に掲示させていただきます。
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