若くてちっちゃい子なので、術後に病院嫌いになると残念だなぁと思いながら手術しました。鎮痛がしっかり効いたのか不安からか、はたまた本人の性格なのか、分からないけれど、術後も落ち着いていて、懐っこく入院生活を送っています。
予防接種で来院
いつもの通り、触診していると、膝のお皿が動く感触
整形外科学的触診により、右膝蓋骨内方脱臼グレード3と判断
左膝蓋骨は戻すことができずグレード4と判断した。
この年齢で両側ともグレードが3~4。小さいのに大変だが、手術すべきだろう。
飼い主さんの決心がついたところで、手術
1.内側支帯開放
- 縫工筋、内側広筋を緊張状態を確認しながらリリース
膝蓋骨が収まるべき溝はほとんどなく、むしろ凸面になっていた
2.定法に従って深化
- 軟骨下をトレパンでくり抜き軟骨を押し下げる
- 膝蓋骨の可動範囲を確認しながら深化の範囲、程度を調整
3.脛骨粗面転位
- 脛骨粗面を骨膜や靭帯を残して部分的に骨切り
- 内側へ移動してピンで固定
4.外側関節包を縫縮
- 外側関節包(筋膜、大腿膝蓋靱帯ごと)を弛緩した分を切開し縫縮
- 切開でできたフラップを内側へ回し内側関節包を閉鎖。この方法は大学のS先生直伝。
関節縫合後に、高精製ヒアルロン酸(アルツ)を関節内注入。消炎鎮痛効果、軟骨回復促進効果に期待。
手術直後のレントゲンでは、良好な仕上がり。一安心。
まだ両側ロバート・ジョーンズ包帯(変法)で歩きにくそうだが、順調。
あとはこのまま安定して成長期を終えてほしい。
【麻酔】
今回、麻酔はプロポフォール導入、イソフルラン吸入で行ったが、加えて、硬膜外麻酔を追加し、鎮痛は万全。