2014/04/02

両側膝蓋骨内方脱臼


柴犬、5ヶ月

若くてちっちゃい子なので、術後に病院嫌いになると残念だなぁと思いながら手術しました。鎮痛がしっかり効いたのか不安からか、はたまた本人の性格なのか、分からないけれど、術後も落ち着いていて、懐っこく入院生活を送っています。



予防接種で来院
いつもの通り、触診していると、膝のお皿が動く感触
整形外科学的触診により、右膝蓋骨内方脱臼グレード3と判断
左膝蓋骨は戻すことができずグレード4と判断した。

この年齢で両側ともグレードが3~4。小さいのに大変だが、手術すべきだろう。


飼い主さんの決心がついたところで、手術

1.内側支帯開放

  • 縫工筋、内側広筋を緊張状態を確認しながらリリース

膝蓋骨が収まるべき溝はほとんどなく、むしろ凸面になっていた

2.定法に従って深化
  • 軟骨下をトレパンでくり抜き軟骨を押し下げる
  • 膝蓋骨の可動範囲を確認しながら深化の範囲、程度を調整
足根を正常な方向へ整えて脛骨粗面のアライメントを確認すると、すでに内側への変位が明らかであった


3.脛骨粗面転位
  • 脛骨粗面を骨膜や靭帯を残して部分的に骨切り
  • 内側へ移動してピンで固定
全体のアライメントを確認しながら内側のテンションをさらに解除

4.外側関節包を縫縮

  • 外側関節包(筋膜、大腿膝蓋靱帯ごと)を弛緩した分を切開し縫縮
  • 切開でできたフラップを内側へ回し内側関節包を閉鎖。この方法は大学のS先生直伝。

関節縫合後に、高精製ヒアルロン酸(アルツ)を関節内注入。消炎鎮痛効果、軟骨回復促進効果に期待。

手術直後のレントゲンでは、良好な仕上がり。一安心。
まだ両側ロバート・ジョーンズ包帯(変法)で歩きにくそうだが、順調。
あとはこのまま安定して成長期を終えてほしい。



【麻酔】
今回、麻酔はプロポフォール導入、イソフルラン吸入で行ったが、加えて、硬膜外麻酔を追加し、鎮痛は万全。