2014/10/23

今日の発見

なぜ、わざわざ楔を使ってまで、溝を斜めにしているのか?



なるほど〜。色んなことを考えてるんだな。

2014/10/18

HP更新しました。

HPのあちこち、小さなアップデートしました。

院長の昔話とか。副院長の趣味の話とか。少しだけ。

お暇なときにご覧ください。
https://sites.google.com/site/niahhp/

2014/10/06

ダ・ビンチ

ダビンチDa Vinciというロボットをご存知だろうか。情熱大陸にも登場した手術ロボットである。

もちろん操作するのは人間であり、自動的に手術を行うことは無い。執刀医は直接からだに触れることなく、機会に頭と手足を突っ込んで映像を見ながらメスや糸をあやつる。すると患者のからだに差し込まれた3〜4本のロボットアームが執刀医の意のままに動き、細かい手術を行う。まるで執刀医が小人になって狭いからだの中に入り込んだかのような距離で病変と対峙する。

まだ触れたことも無い(ちらっと見たことはある)が、外科医にとってはある究極的な到達点であると感じた。機器の精度やアームの数、内視鏡同様の術前計画や経験が成否を分けるとはいえ、通常の手術では見ることのできない視野で、内視鏡外科では感じにくい刃先の感触をしっかり感じながら病変に向えることは、外科医にとって非常に大きなアドバンテージとなる。

これまで肉眼手術中に感じた、見えない動かせないことへのもどかしさ、内視鏡アームでできてしまう病変への遠い距離感。これらを払拭できる。

動物用にアームが小型化し検討が重ねられ、十分な練習を積めたら、これまで苦闘してきた巨大胸腺腫なんかに極めて有力なんだと思う。

お値段が下がらないとなあ・・・2億4800万円だそうな。桁が2つは違うよ。

2014/09/26

全人的ケア

ずっと見てきた患者さん(飼主さん)から電話。死亡連絡。今朝7時2分。
下顎メラノーマと診断し、半年と余命宣告をしてから4年近く、なかなか転移はせず、下顎を部分切除してから3年2ヶ月。17歳の誕生日まで1ヶ月を切っていた。飼主さんはそれを残念だと言ったが、その声は、しっかりと看取ることができたという安堵で満ちていた。

全く腫瘍というものは不思議なものだ。いくら悪性といっても始めからあきらめる必要は無い。結局、2ヶ月前の最後の検診まで再発も転移も確認できなかった。そして獣医が行う治療以上に、生活を支えるケアこそが、重要であると実感した症例だった。

パワフルで愛情あふれたおばあちゃんが支えたからこそ、彼はここまで幸せに生きて来れたのだろう。とくにこの1年はいわゆる老老介護、その愛情に脱帽しっぱなしでした。

どうか安らかに眠ってほしい。

そして、この子に関わったすべての方々へ感謝申し上げます。

2014/08/27

消化管リンパ腫

腸という臓器は単純な管のようだけれど、実は最も難解な臓器の一つである。食べたものを身体に取り込むという大事な役割をしているだけではない。その神経支配は脳に例えられ、全身循環における役割は心臓のようであり、免疫の最前線でもある。

それ故か、見た目の変化が小さくとも、その変調は容易に症状となって現れる。それは即ち、異常の原因を捉えるのが容易ではない事を示している。
決して言い訳をしているのではない。
事実、腸管の病理組織検査は、病理の専門医が集まったって、意見が割れてしまう。これは論文になるほど有名な話だ。

そんなことを改めて思い知らされる症例がいた。

下痢を主訴に消化器内科を受診し、お腹の中に不自然なしこりがある以外異常がないため試験開腹となった。

開腹すると、確かにしこりはあったが、膀胱の表面から突出したしこりだった。良性の平滑筋種を思わせる外観である。恐らく下痢とは関連がないだろう。

ではなぜ?よく見れば、小腸は一様に変色し、一部は生気を失っていた。お腹を開けるまでは分からなかったが、小腸は全体に何かに侵されていた。すぐに腸管の組織検査が行われ、迅速診断の結果は「リンパ腫疑い」となった。これには手術を見にきてきたいた内科の先生も驚いていた。診断が腸炎と覆ることもあろうが、何れにせよ予想外の結果だった。

あのまま手術をせずに経過を見ていたら発見がさらに遅れていたとおもうと恐ろしい。身が引き締まる思いがした。


2014/08/06

偶発所見としての肺腫瘤(肺がんを疑う)

CT 3DMPR(MIP)でみた腫瘤
別疾患の検査で行われたCTで初期の肺がんを疑う所見が見つかった。深部腫瘤で小型であり経皮的生検は安全ではない。しかしこの大きさで肺葉切除すべきなのか。CTを読み込むため、3DMPR像で血管との位置関係を確認。さらにMIP処理を行い、スライスを重ねると腫瘤は後葉のへん縁であり、肺葉部分切除で摘出可能と判断できた。


CT通りの場所に見つかった
開胸すると、CTでの予想通り、肺後葉に小腫瘤が顔を出した。肺がんだとしても部分切除で完全切除が可能である。

肺葉部分切除は、自動縫合器で行うべきである。空気も漏れない確実な縫合が瞬間的にできる。手動では数倍の時間と労力を要する。

肺葉切除であれば、右肺後葉という大きな葉を切除することになる上、右後葉のやや複雑な静脈系を相手にしなければならない。部分切除で切断することで、安全な切除が可能となり、2/3以上の正常な肺後葉を残すことができた。






縫合と切除を達成



2014/08/05

胆嚢摘出(胆嚢粘液嚢腫)

胆嚢破裂

 胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を溜めておく袋である。肝臓から十二指腸へ続く胆管の途中にあり、肝臓から胆汁を入れて、食事という刺激に呼応して消化管へ胆汁を流している。しかしなぜか心臓と異なり、出入口が一つしか無い。これでは消化管だけではなく肝臓へも逆流してしまうではないか。なんとも不完全な構造に思えるが、そこは肝管、胆嚢、胆管の収縮が複雑に調節されて協調しているからこそうまく成り立つのだろう。
 この複雑な構造故なのか、胆汁が胆嚢にうっ滞してしまうことがある。その中で胆嚢粘液嚢腫と名付けられた「病気」がある。超音波検査での見た目が「キウイフルーツ」に例えられるため比較的容易に見つかる。しかしこの「病気」は単純ではなく、薬でよくなることもあれば、薬に反応せず、破裂という重大な結果を生じて緊急手術を要することもある。恐らく原因が一つや二つではないのだろう。
 胆汁は消化吸収を助ける酵素であり破裂によりお腹の中に広がると重大な腹膜炎を生じる。また、消化管の細菌が胆嚢内に感染していることがあり、これも腹膜炎を悪化させる。これらの重度腹膜炎を、投薬によってコントロールすることは不可能であり、決して安全な状況ではないが、手術しなければならない。
 今回も昨日体調が急変したとのこと。切迫した状況で、手術の必要性を説明した。血漿輸血を行い、最大限からだを整えた後、開腹。急変の可能性を説明していたため、破裂してから手術まで迅速を行うことができたためだろう、癒着は最低限であった。破裂部位からは手術中も胆泥の漏出があったものの短時間で胆嚢摘出を終えることができ、腹腔内を十分に洗浄して閉腹した。
 手術前、危険因子である膵炎を疑う所見があり、手術後も予断を許さない緊張度の高い手術であった。膵臓に炎症が波及した場合もしくは膵炎がもとにある場合、治療は困難を極める。
 幸い容態は安定している。無事退院されることを願う。


2014/07/22

後大静脈腫瘍栓を伴う副腎腫瘍


副腎皮質腺腫

腺腫とはガンではなく良性のシコリという意味であるが、できた場所によっては放置できない事がある。副腎の腺腫もその一つ。手術のタイミングにはいつも苦慮する厄介な相手。いずれ大静脈に侵入し、徐々に心臓に向かって血管内を伸びていく。いいのか悪いのか癒着してどうしようもない訳ではないので、合併症のリスクはあるが手術を検討すべき。

後大静脈の壁を通して向こう側に腫瘍栓が動くのが見える。ターニケットを使って大動脈、大静脈を一時的に遮断し、横隔腹静脈を切開。緊張が走る。幸い腫瘍栓はキレイに押し出された。一息入れる間もなく遮断解除のためサテンスキー鉗子で後大静脈を部分鉗圧し、ターニケットを解除。

ようやく一息。

あとは丁寧に血管を縫合し、止血を確認し閉腹。

2014/07/18

フィンガーフラクチャー



肝臓は、膵臓とならび腹腔、消化器外科で最も警戒する臓器の一つであった。それは今も変わらないが、これまで肝葉切除という形で切除されてきた一部の肝臓腫瘍は、部分切除という形で、安全に切除することができる。この手技自体は「フィンガーフラクチャー法」という古典的な方法であるが、術前CTの解析や術中エコーによりより広い範囲に適応できるようになったのだ。これは人医療域の肝区域切除に近い方法だろうと思う。我々東大VMC軟部外科の得意とする手術のひとつである。

2014/07/04

猫のフィラリア症

フィラリア症とは、血液内とくに心臓や肺の血管の中に寄生する寄生虫の感染症です。犬では広く認知されている病気ですが、猫では症状が出にくいとされてきたために、関心が低い病気です。

しかし最近の国内調査で、予防していない場合には1割程度の子が感染し発症する危険性が指摘されました。これはアメリカでの調査と同様でした。これを受けて、当院でもフィラリア症を疑われる場合には、レントゲン検査、超音波検査、血液検査を行います。しかし診断も治療も困難であるため、可能であればわんちゃん同様に予防していくことが重要です。5月から11月にかけて、月1回の予防薬投与をお勧めします。錠剤を飲ませられない猫ちゃんにはレボリューションという皮膚滴下型の予防薬もあります。同様に月1回です。

また、呼吸困難や心臓発作だけでなく、気持ち悪いのかときどき吐くという猫ちゃんもいるようです。気になる症状がある場合にはご相談ください。




2014/07/02

ひまわり



看板の下に種を蒔いたひまわりがもうこんなに大きくなっています。
ついに1本開きました。

2014/06/26

がんセンター見学

今日は国立がん研究センターの視察に行きました。外科医の先生と話すことができ、内容は書けませんが、疑問がまた一つ二つ解し、精度を上げるヒントをもらいました。

いやあ休日潰した甲斐がありました。



2014/06/15

鼻腔内異物

ダックス
出てきたもの
散歩中に飼い主さんが、彼の鼻頭に付いている草?に気づいた。
吸い込んだら大変だと思った瞬間だったらしい。消えてなくなった・・・

これが間欠的なくしゃみと鼻血の始まりだった。
耳鏡で覗いても見える範囲には何もない・・・
もう出てしまったことを飼い主さんと祈りながら消炎剤と抗生剤で経過観察。一旦落ち着いたので、鼻の中には入っていなかったんだろうと、一同ほっと一息。

しばらくして電話があった。まさかと思ったが、なんと出てきたそうだ。

その日たまたま家に転がり込んできた亀さんを興味津々嗅ぎまわっていたらしい。そしたら突然、発作のようにクシャミを始め、鼻血とともにこんなものがでてきたという。

場合によっては内視鏡だね、と話していたのに、なんと通りすがりの亀さんに助けられてしまった。

良い縁があったのでしょう。

なんの草なのか、先日も別の子で、包皮を貫通して出てきた・・・
散歩は気をつけよう。

2014/04/02

両側膝蓋骨内方脱臼


柴犬、5ヶ月

若くてちっちゃい子なので、術後に病院嫌いになると残念だなぁと思いながら手術しました。鎮痛がしっかり効いたのか不安からか、はたまた本人の性格なのか、分からないけれど、術後も落ち着いていて、懐っこく入院生活を送っています。



予防接種で来院
いつもの通り、触診していると、膝のお皿が動く感触
整形外科学的触診により、右膝蓋骨内方脱臼グレード3と判断
左膝蓋骨は戻すことができずグレード4と判断した。

この年齢で両側ともグレードが3~4。小さいのに大変だが、手術すべきだろう。


飼い主さんの決心がついたところで、手術

1.内側支帯開放

  • 縫工筋、内側広筋を緊張状態を確認しながらリリース

膝蓋骨が収まるべき溝はほとんどなく、むしろ凸面になっていた

2.定法に従って深化
  • 軟骨下をトレパンでくり抜き軟骨を押し下げる
  • 膝蓋骨の可動範囲を確認しながら深化の範囲、程度を調整
足根を正常な方向へ整えて脛骨粗面のアライメントを確認すると、すでに内側への変位が明らかであった


3.脛骨粗面転位
  • 脛骨粗面を骨膜や靭帯を残して部分的に骨切り
  • 内側へ移動してピンで固定
全体のアライメントを確認しながら内側のテンションをさらに解除

4.外側関節包を縫縮

  • 外側関節包(筋膜、大腿膝蓋靱帯ごと)を弛緩した分を切開し縫縮
  • 切開でできたフラップを内側へ回し内側関節包を閉鎖。この方法は大学のS先生直伝。

関節縫合後に、高精製ヒアルロン酸(アルツ)を関節内注入。消炎鎮痛効果、軟骨回復促進効果に期待。

手術直後のレントゲンでは、良好な仕上がり。一安心。
まだ両側ロバート・ジョーンズ包帯(変法)で歩きにくそうだが、順調。
あとはこのまま安定して成長期を終えてほしい。



【麻酔】
今回、麻酔はプロポフォール導入、イソフルラン吸入で行ったが、加えて、硬膜外麻酔を追加し、鎮痛は万全。

2014/03/17

レントゲン管理


毎年、院内に放射線の漏れがないか、しっかり測定。

初めての立会い。サーベイメーター持つのも初。






大丈夫。鉛ってすごい。


有茎皮弁 術後3ヶ月目

コーギー、12歳、オス
右肘部腫瘤切除後に、胸背動脈皮弁により創閉鎖


 肘部に数年来あるしこりが急に大きくなってきたとのこと。
状況からもっとも疑わしいのは、血管周皮腫(今は軟部組織肉腫とまとめられている)。通常この腫瘍の挙動はおとなしいが、今回はどうも怪しい。たとえおとなくしても自壊することは必至。



 患肢温存を選択しマージナルでの切除を行った。三頭筋外側頭遠位、上腕筋膜を深部マージンとして切除しつつも、基本的には腫瘤被膜ぎりぎりでの切除。


エコー上でも血流豊富であったが、この場所でこれだけ止血に難渋するとは。本来大血管は殆どないが、ヘモクリップを多用する必要があった。


切除後の皮膚欠損は広範であり、上腕部では肢の半周に至るものだった。

幸い皮下脂肪豊富で健康的な胸背部がある。
この場所は、有茎皮弁の中で最も安定感のある大型の皮弁を作成できる(理論だてた外科解剖が重要)。



自信持って大きくメスを入れる。小さくなって創に緊張を残しては元も子もない。



あとは丁寧に緊張作らないように縫合。


病理検査結果:血管周皮腫、マージン(+)


この場所で、血管周皮腫で、マージン(+)の場合、Elmslieらの報告(2008年)にしたがって、メトロノーム化学療法を行っている。

大学での実験結果も合わせると、シクロホスファミドを使いにくい場合にはピロキシカムだけでも有効なんではないかと思っている。

今回はコンプライアンスの問題があったため低用量ピロキシカムのみ継続してる。

そして3ヶ月目。しっかり発毛し、関節の機能障害はほとんどない。
このまま、元気に走り回ってほしい。




急性不全片麻痺の猫ちゃん



急性不全片麻痺の猫ちゃん(雑種、避妊メス、11歳)

 意識:正常
 けいれん:なし
 骨折脱臼、外傷なし
 顔面脳神経:異常なし
 姿勢歩様:左前後肢虚弱
 CP:左全後肢(-)
 反射:左前肢LMNs, 左後肢UMNs
 頚部痛、背部痛なし
 →C5-T2、脊髄病変疑い

 心拍数180、雑音なし
 虚弱肢の冷感なし
 →動脈血栓症否定

急性発症、片側性、非進行性、脊髄病変としては、交通事故、椎間板ヘルニアなどの外傷と、血栓症などによる脊髄梗塞が挙げられる。
 この子は状況も含め、梗塞と判断した。

 次の日(動画撮影日)は、後肢の姿勢反応に改善が見られた。