2014/08/05

胆嚢摘出(胆嚢粘液嚢腫)

胆嚢破裂

 胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を溜めておく袋である。肝臓から十二指腸へ続く胆管の途中にあり、肝臓から胆汁を入れて、食事という刺激に呼応して消化管へ胆汁を流している。しかしなぜか心臓と異なり、出入口が一つしか無い。これでは消化管だけではなく肝臓へも逆流してしまうではないか。なんとも不完全な構造に思えるが、そこは肝管、胆嚢、胆管の収縮が複雑に調節されて協調しているからこそうまく成り立つのだろう。
 この複雑な構造故なのか、胆汁が胆嚢にうっ滞してしまうことがある。その中で胆嚢粘液嚢腫と名付けられた「病気」がある。超音波検査での見た目が「キウイフルーツ」に例えられるため比較的容易に見つかる。しかしこの「病気」は単純ではなく、薬でよくなることもあれば、薬に反応せず、破裂という重大な結果を生じて緊急手術を要することもある。恐らく原因が一つや二つではないのだろう。
 胆汁は消化吸収を助ける酵素であり破裂によりお腹の中に広がると重大な腹膜炎を生じる。また、消化管の細菌が胆嚢内に感染していることがあり、これも腹膜炎を悪化させる。これらの重度腹膜炎を、投薬によってコントロールすることは不可能であり、決して安全な状況ではないが、手術しなければならない。
 今回も昨日体調が急変したとのこと。切迫した状況で、手術の必要性を説明した。血漿輸血を行い、最大限からだを整えた後、開腹。急変の可能性を説明していたため、破裂してから手術まで迅速を行うことができたためだろう、癒着は最低限であった。破裂部位からは手術中も胆泥の漏出があったものの短時間で胆嚢摘出を終えることができ、腹腔内を十分に洗浄して閉腹した。
 手術前、危険因子である膵炎を疑う所見があり、手術後も予断を許さない緊張度の高い手術であった。膵臓に炎症が波及した場合もしくは膵炎がもとにある場合、治療は困難を極める。
 幸い容態は安定している。無事退院されることを願う。


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