CT-3DMPR |
脂肪腫は、犬では肥満細胞腫についで多く見られる、良性の腫瘍である。身体の何処にでも見られるが通常は体調に影響しないので、経過観察となることが多い。しかしできた場所によっては問題となる。また、浸潤性を示す場合、悪性腫瘍のように適切な切除が必要な場合がある。
これまで手術したのは、ほとんどが大腿部筋間脂肪腫、ときどき会陰部・骨盤内脂肪腫だった。今回は、腋窩(上腕内側)筋間。これまで腋窩は1度しかみたことがない。腋窩は、腕に分布する血管神経が豊富であり、今回も上腕動静脈、頭側皮静脈などが変位していた。明らかな浸潤性はみられず、筋間脂肪腫と判断した。進行緩徐で、症状がなければ経過観察したいところだが、腫瘤拡大、跛行ありのため、手術となった。
CTでアプローチを熟考し、上腕内側を遠位から近位方向へ切開し、胸部では腋窩を覗きやすく、深胸筋の走行を確認しやすいように頭尾方向へと半円状に切開を拡大した。
深胸筋を部分切除し深部を確認したところ、その腱膜下に発生した筋間脂肪腫で浸潤性は低いと分かった。栄養血管は上腕動脈から分岐しており、腕への血流を確保。重要な腕神経叢も圧排のみで剥離可能であった。
術後1週間程度で、手術前の疼痛は快方に向かっている。脂肪腫による腕神経叢圧迫が原因だったのだろう。
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