2015/05/04

ビルロート1型

幽門切除(胃腫瘍)

胃と十二指腸の堺にあるのが幽門である。今回は胃の腫瘍がその門に迫っていた。いやこれを越えていたのかもしれない。幽門部は拡張し幽門の括約筋は判別できなかった。

この場所には、手術難易度を決めるもうひとつの門がある。肝門部と呼ばれるその狭い門には、総胆管、門脈、肝動脈が通り、膵体部が近い。この門が侵されてしまうと手術のハードルは格段にあがる。ヒト医療では、胆管十二指腸吻合や膵管十二指腸吻合など高難度手術により拡大切除した後に再建可能であるが、獣医療では、すくなくとも標準治療としては行われていない。術前の説明としてはこの大事な門がやられていた場合、「開け閉じ」を覚悟していただくことを説明しなければならないため、幽門切除、ビルロートI型、胃十二指腸吻合というと合併症の多い高難度手術という印象がついてしまうが、幽門を切除すること自体が合併症多い訳ではないのだ。

CTを見るかぎりこの「もう一つの大事な門」はやられていなかったし、開腹触診でも大丈夫であった。総胆管を傷つけないように肝門部および小網の脈管を丁寧に胃と十二指腸から剥がし、大網も同様に胃から外せば、あとは病変を切除し、丁寧に端端吻合するという一般的な消化器手術である。

ただし、触診上(肉眼上)では取り切っても顕微鏡レベルで浸潤していれば残念ながら再発する。しかしそれを危惧して拡大切除するとほとんどの症例が大事な門を犯してしまい、治療できないことになる。このマージン判断は症例ごとに手術中に判断によるところが大きい。

【病理組織学的診断】GIST、margin complete


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